むかし、むかし②
前の記事の続き
チャリでのカーチェスは昼の3時くらいだった。
家に帰ったオラは、興奮していた。
公園にオラのガンケシを奪おうとした悪ガキがいて、しかもそいつは仲間がいた。逃げたら、追ってきたから、チャリで壮絶なカーチェスして、相手は車に轢かれた。
ざまーみろ。
正義は勝つ。オラは思ったが、タイミングが悪かったら轢かれていたのはオラだったかもしれないと思ったら、ちょっと背筋が寒くなった。
興奮
勝利
恐怖
楽しかった
いろんな感情が湧いても、相手を懲らしめたことが最高に気持ちよかった。
(そういえば、ゆうちゃんは大丈夫だろうか?た)
友達のゆうちゃんは、威勢がよくガキ大将気質なところがあって、オラたちのなかでは、リーダーみたいなところがあった。頼りになるやつだ。そんなゆうちゃんだから、オラたち同様うまく逃げたに違いない。
時計を見た夕方4時。
ゆうちゃんにはあとで電話しよう、と思ったらチャイムがなった。
ピンポーン
母ちゃんは昼寝中だったからオラが出た。
扉を開けたおらは驚いた、、、
そこには悪ガキ兄と悪ガキ弟、その後ろにゆうちゃんがいた。
ゆうちゃんは捕まり捕虜となって、オラの家を教えたらしい。
最低だ。
オラはゆうちゃんを睨む。ゆうちゃんは、魂が抜けたマヌケな表情をしていたように見えた。
悪ガキ兄「おい、舐めた真似してくれたな」
オラ「とっとと帰れ」
悪ガキ兄「弟が車に轢かれたぞ。どうしてくれるんだ」
オラ「知らない。オラがひいたわけじゃない。消えろ」
地の利はこちらにある。とっとと、帰って欲しかった。もう悪ガキ兄弟のことはどうでもいい。のこのこ捕まったばかりか、家を教えたゆうちゃんにオラの怒りは爆発寸前。悪ガキ兄弟を返してゆうちゃんに説教だ。
と思っていたら、ゆうちゃんが口を開き、
ゆうちゃん「じゃあ、俺帰るね」
オラ「えっ?」
あっけにとられていたら、そくそくと、チャリに乗ってゆうちゃんはいってしまった。
、、、なんだ、あいつは?
呆れていたら、悪ガキ兄の拳が飛んできた。
オラ「いってー!」
年長者の拳だ。流石に重い。
素手同士のケンカなら負ける。そう判断したオラは玄関先にあった布団叩きを相手の腹にお見舞いする。
悪ガキ兄「ぐふっ、痛い、痛い!」
相手がうずくまる。その隙にさらに布団叩きを力一杯たたきつける。
勝てる。
悪ガキ兄は泣き出し、悪ガキ弟は恐怖のためか呆然とこっちを見てるだけ。体格差や年齢差なんて、手段を選ばなければいくらでもチャラにできる。
相手の泣き声が一段と大きくなった時、
「うるせーな!!」と怒鳴り声が響いた。
まずい。母ちゃんだ。
騒いでいたから、母ちゃんが昼寝から目覚めたらしかった。面倒なことになった。
やってきた母ちゃんは俺と悪ガキ兄を見て、オラがいじめていると思ったのだろう。オラから布団叩きを奪って、それを思いっきりオラに叩きつける。
うおー!
あまりの痛さにオラは絶叫した。
母ちゃん「友達いじめてんじゃあねーよ!」
友達じゃあねーし
オラは弁明しようとしたが、母ちゃんの布団叩きのラッシュを浴びて、言葉が出ない。あまりの痛さに涙も出てきた。
母ちゃん「あやまんな」
オラ「ヒックっ、ごめんなさい、ヒック」
オラは悪ガキ兄弟に誤った。
悪ガキ兄弟は何かいいたそうだったか、オラの母ちゃんが恐ろしかったのか、何も言わずに帰っていった。
ちょっとして、オラの泣き声も小さくなったので、母ちゃんは寝床に戻っていった。
悲しい。悔しい。
せっかくの楽しい一日が母の布団叩きで台無しになった。
冬眠中のクマは起こすな。
オラは誓った。